社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
「まだ部下気分が抜けてないな。俺は今夜、河原を帰すつもりはないんだけど」
「えっ……」
まだ腕に力がこもり、衣川課長が私の髪に顔を埋める。体温が一気に上昇して鼓動が早くなる。
「ダメか?」
そんな風に上司の顔から、いきなり男の顔になるのズルい。私は顔を赤くして頷くしかできなかった。
「そうとなったら、行こう」
「ど、どこにですか?」
「俺の部屋」
非常階段の扉をあけた衣川課長だったけれど、すぐにその扉を閉めた。急に止まった彼の背中に顔がぶつかり、鼻が痛い。
「どうかしたんですか?」
「まずいな……みんなが外に出てきてる」
「あっ……一応社内恋愛ですもんね。隠しておいた方がいいかも」
「いや、そうじゃなくて。今捕まりたくない。せっかくふたりっきりになったのに」
その言葉を聞いて、私の頬はますます赤くなった。こんなにストレートに愛情表現されると今までとの振り幅が大きくてどうしていいのかわからない。
でも、思ってみれば元からこういう人なのかもしれない。真面目な彼は恋愛に対してもきっと真面目だ。
これからそれが向けられる先が自分だと思うと、胸がキュッと音をたてて顔をニヤつかせる。
「じゃあ、もう少しここにいましょうか? 時間ならまだありますから」
私の言葉に弧を描いた唇は、そのまま私の唇をとらえた。
唇が離れた瞬間、衣川課長は眉間に皺を寄せて難しい顔をした。
「……やっぱり、早く部屋に行こう。これ以上待たされたおかしくなりそうだ」
そんな彼らしくない言葉に、私は思わず笑ってしまった。
週末の薄暗い非常階段には、ふたりの幸せがあふれていた。