社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
「そうそう。なに考えてるかわからないでしょ?」
「はい。それは衣川課長の下で働くようになって二年目の今でもさっぱり。でも……」
ふとこの間見た、あの柔らかい笑顔が思い浮ぶ。しかし、みんなに話をしてしまうと自分だけのものではなくなる気がして言うのを止めた。
別に話してもいいことなのに、どうしてか話したくなかった。
「でも……どうしたの?」
貴和子さんに覗き込むように尋ねられて、慌てて「なんでもないです」と首を振った。
箸を進めていると、ガラッと入口が開いて知った顔が見えた。
「げっ……成瀬だ」
汐里さんの顔が露骨に歪む。
こっちが気が付いたように、成瀬さんも私たちに気が付いたみたいだ。生憎席はカウンターまで満席。成瀬さんはおばちゃんに声をかけて戸惑うことなくこちらに向かって歩いて来て「ここいいですか?」と貴和子さんと私に聞いた。
「ダメ」
すかさず、汐里さんが睨む。
「お前には聞いてないんだよ」
「なっ? 私の隣に座るんだから、私の許可が必要でしょうが!」
「うるさい」
「もう、ふたりともやめなさい。成瀬くん、早く座って食べないと時間がなくなるわよ」
貴和子さんの許可を受け、成瀬さんは汐里さんの隣に座った。
「よかったー。席が空いてて」
「空いてないのに、むりやりあんたが座ったんでしょーが」
「は? 四人掛けの席に三人で座ってるんだから、ひとつ空いてるだろうが? こんな簡単な計算できなくて今月の数字大丈夫なのか?」