社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
その日仕事が始まると気がついたことがある。私という生き物はすごくゲンキンなのだ。

衣川課長への思いが芽生えた時はふとしたときに、彼の姿が見えて嬉しいなんて思っていたのに、振られた今はふと視界に入るだけで胸が痛む。

けれど、昨日散々泣いて心に決めたことを思い出した。

仕事だけはきちんとこなそう。衣川課長の恋人にはなれなくてもせめていい部下だと思われたい。それは私の小さなプライドだった。

始業時間がすぎて、いつもの通り慌ただしく人がフロアを行き交う。週の半ばのデスクに営業さんが残っていることはほとんどない。みんな朝から夜まで客先を回っていることがほとんどだ。

そんななかデスクに残るのは、私と会議の予定がある衣川課長だ。

気にしないでいるのは無理だけど、気にしないフリをして私は業務に集中していた。そんな中、ちょうど私の席の近くを通りかかった衣川課長が私に声をかけた。

「体調は、大丈夫なのか?」

「はい! おかげさまで。昨日しっかり寝たのですっかりよくなりました」

明らかに寝不足の顔で嘘だとすぐわかるだろう。けれど私は朝、鏡に向かって練習した笑顔を浮かべた。
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