社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
失恋してもお腹はすくし、朝も来る。
翌日泣きはらした私の顔を見た母は「ひっ」と小さな悲鳴を上げたあと、朝食と一緒にアイスノンを準備してくれた。
「朔乃、今日あなた星占い一位よ!」
いつも見ているニュース番組の星座占いを見て母が大げさに声を駆けてきた。放っておいて欲しいけれど、母も心配しているのだとわかるので「そう。よかった」と出来るだけ明るい声で返した。
父に至っては、腫れ物に触ることも出来ずにチョコにちょっかいをかけていて、チョコは本当に迷惑そうな顔をしていた。
みんなに気を遣わせちゃったな。
「いただきます」
いくら泣いても落ち込んでも、仕事には行かないといけない。
幸いお腹はすいていた。母の作った甘い卵焼きを頬張りしっかりと食事をとる。
いつも通り……全部いつも通りにしていれば、きっと失恋の傷も癒される。時間が解決してくれると信じて、私は朝食をとっていつもの時間に家を出た。
いつもとかわらない朝の光景。バスにのっている高校生のカップルも、サラリーマンも私と同じOLさんも……まったくいつもと同じ。
それなのに自分だけが全く違う。昨日までのふわふわとした甘い感情や、キュッと締め付けられるような切なさがなくなり、代わりぽっかりと穴が開いたようだ。
ぼーっと窓の外を眺めていると、降りるバス停に到着し慌てて降りた。
しっかりしなきゃ。
私は自分に発破をかけると、顔をあげて会社に向かった。