社内恋愛症候群~クールな上司と焦れ甘カンケイ~
それからというもの、少しの胸の痛みは残るものの仕事に打ち込み日常を取り戻していた。

衣川課長の態度は、あの日からもなにも変わっていない。それがなによりもありがたかった。部下としてきちんと指導してくれるし、ねぎらいの言葉もかけてくれている。

またむくむくと湧き上がりそうな甘い思いを押さえつけて、仕事に打ち込んだ。

やっと落ち着いてきたと思ったそんな時だった、険しい表情の衣川課長が私に声をかけてきたのは。

「河原、ちょっといいか」

このとき、私を呼ぶ声がすでにいつもと違っていた。急いで立ちあがると、衣川課長のデスクへと向かう。

「今、システム上で売り上げのデータを確認したんだが、俺の手元の数字と金額が違っている。これ、水川デザインの数字まるまるだと思うんだが、きちんと処理さえているのか確認してくれ」

確かに示された数字は、私も見覚えのあるものだ。たしか納期が差し迫っていて処理を急いでしなくてはいけない案件だった。

「すぐに確認します……」

嫌な予感がして、胃がきゅっと縮こまる感じがした。ギュッと握った手にはうっすらと汗をかいている。
たしかあのとき、納品の日程が変わるって連絡があって、それからそれから……。

デスクに戻って、未処理分の書類入れを確認したがそこに出荷指示書はなかった。急いで担当営業さんのラックを確認すると、そこに資料が置いてある。

あぁ、やってしまった。
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