社内恋愛症候群~イジワル同期の甘い素顔~
「どうして? 待つ必要ないだろう」

「あ、でも……急にこんな」

待ち合わせの店へと、走ったときに汗だってかいた。接待でお酒も飲んでいる。キスまでしておいて今さらだけど、アルコール臭いに違いない。

ふたり初めての夜なのに、こんな自分では申し訳ない。

「せめて、バスルーム使わせて」

私の申し出に成瀬は不満げだ。

「ダメだ。もうベッドに行くのも惜しいくらいなのに、無理言うな」

どっちが無理言ってるんだ……そう思うけれど真剣な彼の瞳に逆らえない。

ネクタイを左右に揺らして緩めながら、私の耳元で甘くささやいた。

「五年も待ったんだ。これ以上一秒だって待てない。もう、同期の顔は見せなくていいから、今から滝本の女の顔が見たい」

ドクンと心臓が大きく跳ねた。そしてドキドキと大きく脈打つ。

こんなに好きな相手に欲しいと言われて、嬉しくない人がいるだろうか。

しかも、完全な片思いだと何年も思ってきた相手ならなおさらだ。

私は意を決して深呼吸する。深く息を吸いこむと成瀬の匂いが体中を満たしていく。

「わかった……でもせめてベッドには連れて行って」

「ったく、我がままだな」

口調は荒いけれど、優しく笑った成瀬は私の膝裏に手を入れて私を抱えた。
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