社内恋愛症候群~イジワル同期の甘い素顔~
佐山課長の手元に、別の資料を差しだす。すぐに受け取って中身を見たが、私につき返した。

「予定していた数字の三分の一じゃないか。それで穴埋めできるわけないだろう」

「ですが、まだ今月はあと一週間あります」

「たった一週間だぞ。今からなにができるって言うんだ!」

たしかにたった一週間しかない。でもできることをするしか方法がない。

なにも返せずに思わず黙りこんでしまった。なにか言わなければと思うけれど、上手く頭が回らない。

自分でできるであろうことは、精一杯やっている。

お腹のそこから悔しさがこみ上げてくる。唇をきつく結んで耐えた。

「……わかった。聖学園の担当を若林にする」

私は佐山課長の言葉が信じられなくて、周りの目など気にせずに大きな声をあげた。

「えっ! ちょっと待ってください、あそこは私が前からずっとアプローチしてて——」

「ずっとアプローチしてて、いまだに契約できてないんだろう。お前には無理だ」

たしかに、そうだ。けれど、あと一歩のところまできている。もう少しで、お客様にも満足して契約をしてもらえるはずなのに。

私は一歩も引かずに、必死で食い下がる。

「でも、新規の案件だって時間をかけて成約できましたし、聖学園のことだって……」

「それがいくらの契約だ? 手間をかけすぎてあれだけの金額とは、効率が悪すぎる。おい、若林。聖学園を滝本から引き継ぐんだ」

「でも……」

急に名指しされた若林くんも、驚いて私と佐山課長の顔を見比べている。
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