社内恋愛症候群~イジワル同期の甘い素顔~
「そんなの、どうでもいい。それよりも大丈夫なのか?」

私は頷くだけの返事をすることしかできなくて、ふたたび下をうつむく。そこには成瀬の大きな手につつまれた私の手があった。

頭上から成瀬の声が聞こえる。

「なんか、問題大きくして悪かった」

首を左右に振る。成瀬は悪くない。私の代わりに成瀬が怒ってくれたから、あの場で私のことをわかってくれている人がいるって思えたから、無理矢理だったけれど笑顔を作ってフロアを離れることができた。

「ありがとう……私、嬉しかった。成瀬が見ててくれたならもうそれでいいって思えた」

「滝本……お前、悔しいだろう」

なにも答えられない。そのかわりに唇をぐっと噛んだ。

言葉を発しない私をじれったく思ったのか、つないでいる手を引っ張られた。私は泣いてボロボロになった顔で成瀬を見上げる。

「ほら、顔に悔しいって書いてある」

「……っう」

恥ずかしくなって俯こうとしたら、繋がれていた手が離れてその代わり私の顔が彼の両手で包まれた。

ゆっくりと上を向かされて、強制的に視線を合された。

「ここで諦めるなんて、お前らしくない。俺の知ってる滝本は……負けず嫌いでいつでもまっすぐで、ちゃんと客のことを考えてて、頑張り屋で……だからこんなことくらいでへこたれるような奴じゃない」

さっき佐山課長に仕事のやり方を全否定された気がしていた。だけど、成瀬はこうやって私を評価してくれている。
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