社内恋愛症候群~イジワル同期の甘い素顔~
安藤さんは私が焼酎のグラスを口に運ぶのを見て、満足そうだ。

雑談を交わしながら時計を確認すると、店に入ってからすでに一時間経過していた。

そろそろ仕事の話をしないと、なんのためにここに来たのかわからないや。

「あ、そうだ。今日はこの資料を安藤さんに見てもらおうと思って持ってきたんです」

頃合いを見計らってバッグから資料を取り出した。

今日のために昨日残業して作った資料だ。今までの商談の話をまとめて相手が疑問を持ちそうなところをピックアップして説明している。

「これなんですけど……」

差し出した資料を安藤さんが受け取ったので、私は話を続けようとしたけれど、その資料はパサッと机の下に置かれてしまう。

「こんな話は今どうでもいいだろう?」

こんな話? 商談の内容でわからないところがあるからというのが本来の目的だったはずだ。どうでもいいはずなんてない。

「でも、今日はすこしでも安藤さんの疑問を解消しようと思ってこちらに参ったんですが」

「そうだね。だから色々質問していいかい?」

正面に座っていた安藤さんが、私の隣に膝立ちで移動してきた。

ちょ、ちょっと近いよっ! 一体どういうことなのっ?

近づいてくる安藤さんとの距離を失礼のないように、できるだけとった。しかし、その分相手も詰めてくる。

「滝本さんは彼氏いるんだっけ?」

「いえ、そういった話は……」

「いいじゃないか、お互いのプライベートを知ればもっと仲良くなれる」

いや、いや、安藤さんのプライベートなんてこれっぽっちも知りたくないし。
< 94 / 119 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop