今夜、君にラブロマンスをささげよう。
そして志月さんもどちらかというとたくさん話をするタイプでなさそう。
やっぱりわたしが何か話さなきゃ、この沈黙からは逃れられそうにない。
(う~ん。話題、話題)
わたしはない頭を動かして、一生懸命話題を探す。
目をぐるりと回して周囲を窺えば、次に見えたのは志月さんの袖の部分だった。
「っ、あのっ、先輩、袖」
志月さんの袖にある校章の飾りボタンが今にも取れそうだ。
「うん? ああ、これのこと? 完全に取れてから仕立屋にでも行って取り付けてもらおうかと思ってね」
「……あの、よければ制服を貸していただけますか?」
ボタンが取れかけているのがどうも気になってしまう。
見て見ぬフリなんて器用なマネ、わたしにはできない。