今夜、君にラブロマンスをささげよう。
(なんかわたし、お世話好きの近所のおばあさんみたいかも……)
そういう親切な人ってたまにいるよね……。
でもこの年齢でおばあさんってどうだろう。
所帯じみているのは仕方ない。
だって家族に迷惑がかからないよう、せめて家事全般だけでもできるようにって自分に言い聞かせていたからーー。
年頃の女子はきっとこんなに気になるものでもないことは知っている。
でも、取れかけたボタンが気になって仕方がないんだもん。仕方がないよね。
どうせ志月さんには異性として見られていないんだからーー。
ちょっぴり悲しくなる自分にそう言って聞かせる。
「ああ、構わないが……」
(裁縫道具、いつも持ち歩いていて良かった)
志月さんのブレザーを受け取ったわたしは、内ポケットから小さなお裁縫袋から針と糸を取り出し、ボタン付けに取りかかる。