フラワーガーデンへようこそ〜優しい愛をあなたに〜
悠人の気遣いはもちろん嬉しかったが、そう簡単に、気持ちが浮上するはずもなく…時々見かけるカップルが仲良く抱き合っていれば、それだけで気が滅入ってしまい、これは重症だと思ってしまうかすみ。

それと同時に、もうこんなに薫の事が好きになってたんだと改めて知って、驚いた。

帰り際、花壇に植えられた花に目がいく。

「…アネモネ」

かすみの家の庭にも、アネモネの花が咲き始めていたな。

「…遠藤?」
「…ぁ、すみません。行きましょう」

アネモネから視線を外すと、アッと、思い出す。

「…チーフ」
「…ん?」

「…このまま、ここで別れてもいいですか?」
「…どうした?」

「…とても大事な用があったのを忘れてました」

「…今日じゃなきゃダメなのか?」
「…はい、他の日じゃダメなんです。今日は、ありがとうございました」

頭を下げたかすみは、そこで、悠人と別れると、いつもとは違う花屋で花を買い、とある場所に向かった。

「…お母さん、遅くなってごめんね」

…かすみは、母のお墓に来ていた。もう日も暮れかけていて、お墓に人気なんてない。

花を生けたかすみは線香をたて、手を合わせると立ち上がり、歩き出した。

「「…」」

なんで、と、かすみは俯き、歩く事に集中した。

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