フラワーガーデンへようこそ〜優しい愛をあなたに〜
通り過ぎた瞬間、相手がかすみの片手を掴んだ。

「…かすみさん」
「…こんな所で会うなんて奇遇ですね」

そう言って、微笑んで見せた。そして、そっと、掴まれた手を離した。

「…今日は、うちに花を買いに来てくれませんでしたね」

とても寂しそうな目でそう言ったのは…薫。

「…西園さんは、どうしてこんな所へ?」

その問いに答える事なく、話をすり替えた。

「…常連のお客様が、具合が悪くなって、代わりに、お花を生けに来たんです」

「…そうなんですか。…あの、急ぎますので、私はこれで」

「…また、来てくださいね」
「…もう、フラワーガーデンにはいきません」

「…かすみさん!」

自分から言ったくせに、泣きそうになったかすみは、その場を走り去った。薫は追いかけようとしたが、花を生けに来た所で、手には花束を抱えていた。

そのせいで、追いかけることが出来なかった。

…なぜ、突然あんな事を言ったのか、薫には、全く見当がつかなかった。

無理もない。あの場面をかすみに見られてるなんて、知らなかった。
< 37 / 74 >

この作品をシェア

pagetop