本を片手にあなたと恋を
ちょっとほっとする。向こうは自分みたいに気にしてるわけないのに。
ボックスの中には3冊しか入っていなくて返却はすぐに終わってしまった。
今日に限って、人が少ない。
さっきの生徒のあとには誰も来てない。
本を戻し終えた拓海が戻ってきて隣に座った。
何か話さなければと思うけれど何も思い付かなくて焦る。
「あの、」
「あのさ、」
やっと話しかけた瞬間声が重なった。
「さき、どうぞ。」
「さきに言って。」
また、全く同じタイミングで可笑しくなって顔を見合わせて笑ってしまう。
「大したことじゃないから、本当にさきどうぞ。」
と、隣に向き直り聞く姿勢にはいる。
拓海は困ったように笑った。
「そう、言われるとなんか言いにくい。」
「遠慮せずに、ほらどうぞ。」
もはや押し売りのような台詞に拓海はますます苦笑いしながら、口を開いた。
「あのさ、好きなタイプってある?」
驚いて、数秒固まる。
「好きなタイプ?」
ただ、バカみたいに繰り返すと、若干顔の赤い拓海が頷く。
「そう、好きなタイプ。ないの、なんか?」
「え、えっと。考えたことなかった。」
「優しい人とか、何でもいいから。」
えっと―言いかけた言葉は、一人の生徒が入ってきて未発に終わった。
「こんにちは、返却ですか?」
多分、引きつってるであろう笑顔で話しかけた。