鋼鉄の翼―ゾフィエル
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甲高い警報音が、鳴り響く。

『住人のみなさまは、シェルターへ避難ください。住人のみなさま――』

遥か彼方から聞こえる、人工知能・ウームの機械音声を聞くと、身が引き締まる。

ハンガーで待機している間、心は平静に保つ。が、心臓は警報器よりもけたたましく、私を煽っている。

『本部より通達、〝ゾフィエル〟出撃準備はできているか?』

 ナテューアリヒ
「Naturlich」

ゴーグルと一体化している無線に答えると、私の眼前が開かれる。

重々しい鉄扉の向こうから、暗いハンガーに光が注ぎ込んでくる。

それは、私が全身に装着している鋼鉄の翼・ゾフィエルを導く光芒か、あるいは戦禍を知らせる狂喜の幕か。

開かれた視界、赤く回るランプが、長く、私の前に延びる滑走路を縁取って続いている。

全身装着式鳥人型飛翔装置――通称・〝ゾフィエル〟のために用意された、この空中都市・ピュラクスにおける滑走路だ。

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