鋼鉄の翼―ゾフィエル
無線から、上司が情報を叩きつけてくる。

『敵・モンストル方位は北北西、距離五千、高度は四千。ピュラクス到達まで十分弱。落とせるな? ヴァルヌス』

 ナテューアリヒ
「Naturlich, 誰に言っている」

全身を鎧に包んだ私は、ただの女ではない。

蒼空を舞うピュラクス護衛空軍・ヴァルヌス少佐だ。

射出リフトに私を搭乗させた繋ぎの男が、黄色い発光灯を振り叫ぶ。

「少佐、いつでも飛べます!」

「よし」

わずかな労力で、鋼の両翼は軽く持ち上がった。

ヘルメットが自動で私の頭を覆い、目の部分だけが透明化する。

視界は良好、稼働所作に不備なし。

脊髄からの神経接続、グリーン。

「ピュラクス空軍、ヴァルヌス機――」

フィィィィィ――

「発進するっ!!」

ヒュバンッ!!

刹那、人工の翼は天使の名をほしいままに、飛翔へ突貫する。

空を叩くエンジン音を尻目に、滑走路を白銀の矢となって直進。

空中都市から突出した天への架け橋を、一気に抜け――飛び出す。

私は、蒼穹を、全身で掴んだ。
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