鋼鉄の翼―ゾフィエル
浮き島とでも言おうか……

大樹の幹と根を母体に、棚田のように増築を重ねた都市ごと宙へ押し上げた国――ピュラクス。

それが、あ、とも言えぬ間に遥か後方へ、薄雲と風の向こうへ消えていく。

風を切る鎧以外、今の私に頼れるものはない。

唯一、無線だけが母国と私を細々と結ぶ。

『本部よりヴァルヌス少佐へ。敵・モンストルは前方、距離三千』

「了解」

答えている間にも、〝ゾフィエル〟の索敵機能が敵を感知し、ゴーグルに赤い丸印が浮かび上がる。

丸印の映像が局部的に拡大された。

囲われた中に映るのは、まるで、空を飛ぶエイ。

我ら鳥人文明に仇なす存在。

その時、モンストルの頭部が嘴のように開き、

「!!」

光線が、飛んできた。

即座、翼で風を叩き、体を押し上げる。

私の腹の下を、黄金色の破壊が過ぎ去った。

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