社内恋愛症候群~小悪魔な後輩君に翻弄されて~
肩を落としたそのときに、若林くんが不意にこちらに視線を向けた。

あっ、見つかっちゃう。

慌てて、顔をひっこめて踵を返し歩き出す。盗み聞ぎしていたなんて恥ずかしい。

早足でできるだけ早く、その場から離れる。後ろから足音が近づいてくるのに気がついて、私はますます足を早めた。

エレベーターよりも階段がいい。私はそう思い人気のないくらい階段を駆け下りる。

コツコツと響くヒールの音に交じり、後ろからも足音が響く。

必死で駆け降りたけれど、あっけなく私は若林くんに掴まってしまった。

「はぁ、はぁ……なんで逃げるんですか?」

肩で息をしながら若林くんが、私の肩を持ちふりむかせた。

「なんでって……わ、若林くんが追いかけてくるからよ」

自分でも苦しいいいわけだと思う。なぜ、立ち聞きしたことを素直に謝れないんだろう。

自分の可愛げのなさに、いまさらながらあきれてしまう。

「……そうですね、蓮井さんはオレから逃げてばかりだ」

静かな声で彼がそう言った。

蓮井さんと呼ばれた。それがなんだかすごくショックだ。いや、自分でそう呼んでほしいと言っていたのに、むしのいい話だ。

そんな自分を隠すように、また聞きたくないことを聞いてしまう。

「最近、合田さんと仲がいいみたいね?」
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