鬼常務の獲物は私!?



よかった……ふたりが出会えて、本当によかった……。

泣かない兄妹の代わりに、私が泣いてしまいそうだった。

湧き上がる感動の中、両手の指を組み合わせて兄妹を見つめていると、高山さんがやっと声をかけてくれた。


「それにしても……福原さんはなぜ、そのような格好でいるのですか?
目もとが潤んでいるようですが、それについても、なぜとお聞きしたいところです」


私の姿勢はさっきからずっと変わっていない。

ソファーに膝立ちして、テーブルにお尻を向けた姿勢のままだ。

その理由を説明するとなると、ストッキングの伝線にまで話が遡ってしまい、恥ずかしいので口に出すがためらわれる。

それで、後者の質問についてだけ答えた。


「生き別れた兄妹の再会に、感動してしまって……」


高山さんに「はい?」と聞き返され、神永常務には「あ"?」と、片眉を吊り上げられた。

比嘉さんだけはなにも言わなかったけれど、クールな視線が射るように私に向けられて、自分の推測が間違っていることに気づかされた。

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