鬼常務の獲物は私!?

呆れたような声で、神永常務が言う。


「誰が生き別れの兄妹だと言ったんだ。お前はまた、おかしな妄想をしていたな？
小百合は、俺の祖父の妹の娘の子供だ」


「祖父ということは、うちの会社の会長の妹さんの……ええと、なんでしたっけ？」


「遠縁の関係だと覚えておけばいい」


兄妹ではなく、感動の再会ストーリーも存在しない……そのことを残念に思いつつ、常務が比嘉さんを下の名前で呼んだことについては、疑問がとけて納得していた。

それに加えて、高山さんが補足してくれる。


「比嘉さんは別業種の大手企業で秘書をしておいででしたが、私が是非にとお願いしまして、常務の第二秘書に……」


つまり、常務の第二秘書が長続きしないことに苦慮していた高山さんが、親戚なら神永常務との相性もいいだろうと、比嘉さんのもとに通って口説き落としたみたい。

日々、神永常務に尽くす高山さん。
その業務範囲が、そんなところにまで及んでいることに驚きつつ、感心もしていた。

なんて立派な忠誠心なのだろう。

高山さんのその想いを無駄にしないためにも、比嘉さんにはぜひ頑張っていただきたいところだ。