鬼常務の獲物は私!?
「福原さんはいつも営業部で普通に働いておりますが、常務の仕事の合間にだけ、こうして来ていただいております」
「どうしてですか?」
「神永常務の疲労を癒してくれる、貴重な存在ですので」
私の存在が求められていることは理解しているが、癒しになっているのかは疑問だ。
私に会うことで、疲れが取れるの……?
逆に休憩時間や昼食時間が減るような気もするのだけれど……。
「うーん」と考え込んでしまう私だが、比嘉さんはそれ以上の説明を求めなかったので、納得してくれたのだと思う。
ただ、私に向けられる視線の冷たさは消えず、むしろ強まった気がするのは気のせいか……。
怖いと感じてしまい逃げ出したくなると、神永常務がタイミングよく私に言った。
「日菜子は営業部に戻れ。
俺は今からもう一件、仕事が入っている」
「は、はい!」
刺すような視線から逃げ出せることにホッとして、足早にドアに向かっていたら、すれ違う際に、ボソリと呟く比嘉さんの声を聞いた。
「慰み者なのね……」