鬼常務の獲物は私!?



ショックだけれど、納得してしまう。
そして、嫌だなと思う感情が……。

そんな目で見られるのは悲しい。

神永常務の目に映る私は、もっと綺麗な存在でありたいし、体だけじゃなくて、存在丸ごとを必要としてもらいたいのに……。

深い溜息をついて常務室前を離れ、廊下を歩き出す。ところが、5歩進んで、また足を止めてしまった。

あれ……私、今、なんて思ったっけ?

私の存在丸ごとを、常務に必要としてもらいたいと思った気が……。


ドキドキと鼓動が速度を上げて行く中で、胸に手を当て、恐る恐る自分の心に問いかけてみる。

もしかして私は、神永常務が好きなの……?

しかし、5秒経ち10秒経っても、心臓は苦しくなるばかりで、その疑問に答えてはくれない。

すると突然、前方にある応接室の閉まったドアから、笑い声が漏れ聞こえてきた。

5階は重役のフロアで、呼び出されでもしない限り、私のようなただの事務員ががここに来ることはなく、ウロウロしているのはすごく不自然。

ハッと我に返り、それを思い出した私は、他の重役たちに出くわす前にと、いつになく素早い動きで階段を駆け下りた。



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