夢物語


「これが最後かな?
何に乗りたい?
……そういえば観覧車…乗ってないな。
そうする?」

「うん。そうしよう。」

目的の時間がやってきた。


観覧車の一番盛り上がるところ
つまり一番高いところで
「私たち別れましょう。」
よし、心の準備完了。

そして隣を見るととても緊張しているのか
急に喋らなくなった健一がいる。




すこし空がオレンジ色に染まり出した頃
私たちの順番がきて観覧車に乗り込んだ。

健一は私の正面に座り
うつむいている。

そこで私から
「今日はどうだった?」
と持ちかけてみた。

健一は顔を上げて私の目を見た
「楽しかった…」
すこし小さな声で呟いた。

健一は私から視線をはずし
斜め上をみた。

一番高いところに来るのをまっているの?
なんでだろう?





二人とも沈黙のまま
頂点についた……

今だ!
『実は…』

二人の声が重なった。

「そっちからいってよ。」
私はなんだか言いづらいから…
なんで?
なんか別れをつげたくない。

…私もしかして
健一のこと好きに?


「俺さ実は……」

え?
結婚してくれ?
まだ歳無理でしょ。


「俺……ゲイなんだ。」





「ゲ……イ…?」


何いっているの?
思考回路がショートしそう。



「俺さ、男が好きなんだ。
今日、お前とデートして思った。
なんかドキドキしないんだ……」



「ちょちょちょ…まてー。
ということは2年前の健一は
ゲイとわかったまま
私と付き合い続けたということ……?」



「2年前の俺?」



「いやいや…なんもない。」



もしかして健一のこと好きかもと
思っていたのに

衝撃すぎてどうしよ。


前よりも心が…。



「で、お前は何言おうとしたんだ?
私と別れてほしい?って」


……あたりだよ。
でもいえない。








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