やさしい先輩の、意地悪な言葉
「ダメだって言ってるだろ。ふざけるな」

……神崎さんは強い口調でそう言うと、給湯室を出ていってしまった。


「やべー。怒らせちまった」

ははは、と二山さんはなんてことないように笑うけど。


……私は言葉を失っていた。

いつもやさしい言葉しか使わないイメージのある神崎さんが、珍しく荒い言葉を使ったからというのもあるけど、それよりも……



『なに瀬川さん誘ってるんだよ』



もしかして、私嫌われてる……?




呆然と立ち尽くす私を見て、二山さんははっと慌てたような様子で言った。

「あのさ、あれは俺に怒ってたんであって、遥香ちゃんに怒ってたわけじゃないからね?」

「……で、でも、私に来てほしくないみたいだし……」

「違うって。なんつーか、まあもともとふたりで飲みに行く約束だったし、店も二名で予約してたしな。俺もノリで誘っちゃったけど、急に誘うべきじゃなかったな、ごめん」

「え? あの……」

誘ってもらったこと自体はうれしかったのに、なんだか謝られてしまった。


そして二山さんは、「仕事片づけに戻るわー」と言って、そのまま給湯室をあとにした。



その場に残った私は……やっぱりさっきの神崎さんの様子が気になって。
< 19 / 134 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop