やさしい先輩の、意地悪な言葉
「はぁ……」

昨日と同じように、冷たい夜風に吹かれながら駅までの道を歩く。


ため息が出てしまう。
あれから散々だった。

もともと隆也のことで悩んでいた上に、神崎さんにあんな態度をとられて。

……気に病んで、落ち込んで、ミスをして……その処理をしていたので帰る時間がこんなに遅くなってしまった。うわ……もう二十一時かぁ。自業自得だけど……。


神崎さんとは、あれから全然話さずに帰宅してしまった。
なんとなく、神崎さんは私に話しかけようとしてるかも……って節は時折あったけど……話を聞くのが怖くて、私はそれを避けてしまった。

人と話すのがニガテなのに、人と話すのを自分から避けてしまう……。だから余計にダメなんだって思うのに。


…….神崎さんは今頃、二山さんと飲んでるんだよね。
……私の悪口言ってるかも……。そもそも私といっしょには飲みに行きたくないみたいだったし……。

そう思うと、またため息が出て、ため息が出ると、また暗い気持ちになる。
そんな悪循環に襲われていると、通りかかったお店からいい匂いがした。


(ピザの匂い……)

ふと香りの方に目を向ければ、そこは最近オープンしたばかりのピザのお店で。
この道は毎日通っているけど、このお店はオープンが遅いため、普段帰宅する時はまだお店が空いてなくて、ピザの香りを感じたのは初めてだった。

こじんまりとした、小さな一軒家のようなお店だけど、洋風のオシャレでかわいい外観をしている。入り口には、オレンジのライトがポゥッと光っていた。
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