やさしい先輩の、意地悪な言葉
外から中をチラッと覗けば、カウンター席がメインで、お酒も取り扱ってるみたいだから、家族連れで入るお店というよりは、バーみたいな、大人向けのお店なのかなって思った。


……あれ?

カウンター席の真ん中に座ってるの……二山さん? てことは、二山さんのとなりで机に突っ伏してるのは神崎さんかな……?

すると、二山さんがたまたまこっちを見て、お店の窓越しに私と目が合った。


し、しまった。やっぱり二山さんだった。
ど、どうしよう。露骨に目を逸らすのもあれだし……かと言って、ここでふたりに突然混じっていくほどのコミュニケーション能力は持ち合わせていない。
なので、ペコ、と会釈をして、そっと立ち去ろうとした、その時。

窓越しの二山さんは、なにやら私に手招きをしている。「こっち来て」って感じだった。

え、え、どうしよう。行かなきゃいけない? で、でも、私と飲みたくないみたいに言ってた神崎さんもいるし、ほんとに行ってもいいのか……。


とかいろいろ思ったけど、二山さんの表情は、なにやら困ってるような様子で。


なにか、あったのかな。そう思い、私はゆっくりとお店の中へと入った。カランコロンと入り口の鐘が鳴り、店員さんが「いらっしゃいませ」と私に言った。


私はまっすぐに、カウンター席にいる二山さんと神崎さんのところへ歩いて行った。

神崎さんは、やっぱり机に突っ伏していて、私にも気づかず、どうやら寝ているみたいだった。
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