やさしい先輩の、意地悪な言葉
……じゃあ、ゾンビ?

……私、映画はなんでも観るけど、ホラーだけはニガテなんだよね……。
本音はやっぱりラブストーリーがいいけど……。
と思いながらラブストーリーのポスターをちら、と見ると。


「ん? 恋愛もの? これにする?」

と、神崎さんに聞かれる。


「あっ、いえ!」

とっさにそれを否定してしまう。神崎さんが興味のないものをいっしょに観てもらうわけにはいかない。


そう思い、私は。


「これにしましょう」


と、ゾンビ映画のポスターを指差した。



「ホラー好きなの?」

「ま、まあ」

「こっちの恋愛ものじゃなくていい?」

「は、はい。ゾンビ大好きなので!」

「え、ゾンビ好きなの?」

神崎さんは少し驚いたような顔を見せたけど。
私たちはそのままチケット売り場の列に並び、三番スクリーンのちょうど真ん中辺りの席にふたり並んでゾンビ映画を鑑賞することにした。
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