強気な彼から逃げられません
「確かにもてたけど、俺は卯月だけだから。……今は」
最後の一言がなければ完璧なのに。
「たしかにね。少なくとも今の愁は、私だけを愛してくれるから、もういいの。私だって、愁以外の人と付き合った事あるし」
「俺より卯月の方が、色々やらかしてるからな、ネタの宝庫」
悔しそうな愁さんの声に、卯月さんは小さな笑い声をあげて私に視線を向けた。
何か楽しい事を思い出したかのようなその瞳に、嫌な予感がした。
すっと視線を外そうとしたけれどそれよりも早く、卯月さんは言葉を続けた。
「怜さんの披露宴の時には、私と愁で、怜さんの過去の暴露大会を開催してあげるから、お楽しみにね……ううん、覚悟しておいてね」
ねっ?
と首を傾げる可愛い顔に見とれつつ、その言葉の意味を受け止めていると、次第に顔が熱くなる。
怜さんの披露宴で私が覚悟をするなんて、それって結局私と怜さんが結婚……ってことで。
一気に鼓動も早くなって、どうしようもない。
「わ、私は、そんな、まだ……」
慌てて言い繕ってみても、そんな私の気持ちなんてお構いなしに、愁さんと卯月さんは顔を見合わせてくくっと笑っている。
そんな様子を見ていると、二人と怜さんはかなり近しい間柄だと、わかってしまう。
怜さんと同じ事務所で働く愁さんと、愁さんの奥様、卯月さん。
色白な肌と黒く艶やかな髪。
肩の上で揺れているボブは彼女の小顔によく似合っていて、大きな瞳を強調している。
愁さん、面食いなんだな、と考えつつ、卯月さんだって面食いだと納得する。
美男美女、お似合いだ。
そんな事を考えていると、愁さんが、自分たちのテーブルに同席しないかと誘ってくれた。
もうすぐ愁さんの後輩の男の子が合流すると聞いて、一発で気持ちが上向いた美絵は、二つ返事で了解し、みんなで食事をする事になった。