強気な彼から逃げられません
愁さんの後輩である真二くんは、美絵と気が合ったのか、二人で連絡先を交換し合いながら大きな笑顔を見せているし、もちろん美絵だって照れ笑いを浮かべながらも視線は真二くんだけに向けていて。
なんだか私一人、取り残されたみたいだ。
決めた。今日は怜さんの部屋に帰って、怜さんに電話しよう。
よし、と心でつぶやいてグラスに残っているビールを飲み干した時。
テーブルに置かれていた愁さんのスマホが音を響かせた。
「……野崎さんからだな。何かあったか?」
愁さんは「 悪い」と言いながらスマホを手にとり、電話に出た。
「野崎さん? お疲れ様です、何かありました?」
仕事モードになった声から、きっと事務所の人からの電話だとわかった。
夜も深まりつつあるこの時間に仕事でトラブルでもあったのかと真二くんを見ると、彼は小声で
「うちの事務所の看板弁護士の野崎さんからです。今日は出張で……あ、怜さんも一緒ですよ」
そう教えてくれた。
「怜さんと……一緒」
怜さんの名前を聞いて、思わず愁さんに視線を向けた。
今話している愁さんの電話の向こう側には怜さんがいるのかもしれない。
そう思うと、それだけで心がじんわりと暖かくなるなんて、どれだけ私は怜さんにはまってるんだろう。