強気な彼から逃げられません
その晩は、気持ちが落ち着かなくて、なかなか眠れなかった。
帰り道が同じ方向だという事で、愁さん夫婦にタクシーで送ってもらったのは、怜さんの部屋。
マンションの下にタクシーを停めた時、意味ありげに、そして嬉しそうな瞳が四つ、私を見つめていた。
愁さん夫婦二人とも、私が怜さんの部屋に帰るのが嬉しいらしい。
『芹花ちゃんが怜の部屋に引っ越す時には手伝うからねー』
卯月さんの弾む声に、私は曖昧に笑ってみせたけれど、心の中では、いずれはそうしたいな、と考えていた。
怜さんにも私の部屋を引き払うように言われているし、やっぱり、二人とも一人暮らしなんだから、一緒に暮らすのが自然な流れなのかな。
けれど、相変わらずふんぎりがつかない自分もたしかにいる。
「とにかく、明日一日、仕事頑張らなきゃ」
既にお風呂を終えて、怜さんのベッドに滑り込んでは長い時間を悶々としていた。
時計を見ると深夜一時。
怜さんに電話をして声が聞きたいと思ったけれど、不安定な気持ちはゆらゆらしているし、どうしようかと寝返りを何度もうっているうちにこんな時間になってしまった。
「いいや、もう、寝よう」
自分にそう言い聞かせて、シーツに潜り込んだ時、サイドテーブルに置いていたスマホが鳴り響いた。
怜さんの着信音が部屋中に広がって、慌てて手に取った。