④オオカミさんのプロポーズ エリート課長の専決事項
 というわけで。
 その日、久しぶりに本社勤務だった熊野は、とある決意を胸に赤野燈子を4度目の食事に誘った。

「晩飯でも行く?」
 終業間際、熊野から尋ねると、

「ウワー、奢りですか?ヤター!」

 と、二つ返事でオッケー。

 熊野がこれみよがしにアピールしたから、課の連中は皆、二人の交際が始まったことを知っている。

「え~、赤野ちゃんだけいいなー。俺らも誘ってくださいよー」
「ウルサイなっ」
 若い奴が嬉しそうに冷やかすから、熊野もまた嬉しそうにソイツをシバく。

 それから熊野は、まだ忙しく仕事をしている大神をちらりと見た。

 …近頃の彼の、鬼気迫る仕事ぶりは、課員達の怯えの対象になっている。

 ふと、こないだの同期会のことを思い出した。

__『ああ、良かったな。
 アホ同士で、お似合いじゃないか』
 思いっきり自慢げにそれを告げた俺に、冷ややかに言い捨てた大神(ヤツ)。
 その後すぐ、女の子達を口説きに、向こうの方へ消えていったが…
 右手と右足が同時に出ていたところを見ると、さぞや動揺していたに違いない。

 クックック。ざまみろだ__
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