④オオカミさんのプロポーズ エリート課長の専決事項
 「ふぃ~、やっと終ったぁ、お疲れさま様でしたぁ!」
 燈子の声に反応し、熊野はソワソワと席を立った。

 と、片付け始めていた彼女の机に、“どんっ” と分厚い書類が置かれる。

「ゴメ~ン赤野、それ、今日中だったわ」
 大神だ。
 ニヤリと悪辣に笑いながら、恨めしそうな彼女を見下して悦に入っている。

「うう…終業前なのに…」
 置かれた山の厚さを目で計りながら、燈子はガックリと項垂れた。

 勝ち誇った視線をチラッと寄越した大神に、熊野はため息をついて、再び席に腰を下ろした。

__ほらな、見ろ。よっぽど悔しかったんだ。
 あからさまに意地悪してやがる。

 だいたいさ。皆、アイツをクールだの何だと言うけれど。アイツ実は、ものすごいガキっぽいやつなんだ__


 少しでもイイ雰囲気をという熊野の当初の目論みは外れ、彼女の残業が終わるのを待ち、結局晩飯は近くのファミレスになった。

 
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