④オオカミさんのプロポーズ エリート課長の専決事項
「あの方はな…きっと。
 オマエが大切な局面で、正しい選択が出来るのかを試したんだ。
 目の前のエサに食いついて、エゴの道を選んだらアウト。テメエは一生、社長の使い勝手のいい捨てゴマで終りだ。
 だってそうだろう?ギリギリの時にこそ勇気を出して、正しい方向に舵を切れなきゃ。
 ましてや、大事な家族を蔑ろにするようなヤツに____
 俺なら絶対に大事な役職(ポジション)は与えない」


 自信たっぷりに言いきった熊野だが、直接聞いたわけではない。勿論ハッタリだ。

 それでも彼には確信があった。

 と____

 大神は、泣きそうな顔で熊野を見上げた。

「…そんな、勝手な事いうなよ…」
 熊野は、いまいましそうに彼をつき離した。

「とにかく!俺はもう、降りたから。後は自分(テメエ)が考えろ」
 
 シャツの第一ボタンは落ち、事務椅子は大神を乗せて後ろの壁まで転がった。


 熊野は、情けない顔をしたままの大神を睨み付けると、フンッと鼻を鳴らした。

 そうして、ドカドカと足を踏み鳴らし、課の扉を乱暴に閉じて出ていってしまった。


 モニターの青い光に照らされて。
 暗闇の中一人残された大神は、両手で頭を抱えていた。

「勝手なことを抜かすなよ

 ……くそっ」

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