世界から君が消えた
「大丈夫!」
優奈が小走りで俺の所まで来た。
俺の手を取り、指を絡ませる。
優奈の手は温かかった。
「蒼汰がココにいる限り、私はココにいる。だから、蒼汰もココにいてね。」
前も言ったでしょ?って微笑む。
それでも、どれだけ墨で塗りつぶしたって、消えてくれない記憶が、心に突き刺さる。
「あ、おぅ。」
ぎこちなく笑うと、腕を引っ張られた。
「蒼汰。」
俺の首元に優奈の手が回り、抱きしめられる。
「無理しちゃダメだよ。私の前では笑顔作らなくていいから。」
お母さんの様に俺の記憶ごと、包んでくれた。
背中に腕を回し、首元に顔を埋める。
背が高いといっても、175cmの俺からしたらやっぱり小さい。
大きく深呼吸すると、落ち着いて来た。
まるで“6年前”と同じだな。
「優奈。」
静かに、優奈を離す。
「俺はココにいるよ、ずっと。」
だからお前も、ココにいて、ずっと。
「うん!」
俺の姿が見えなくなるまで、優奈は俺に手を振っていた。
優奈は男っぽいと思ったら、やっぱり女で。
かっこいいとはいっても、結局は可愛らしくて。
子供だなと思う反面、まるで親の様に面倒を見てくれる時もある。
辛い時は、いつも側に居てくれた。
こいつを見ていると、他の人とは違う感情が胸に生まれる。
そーいえば、お母さんが言ってたな。
『女の子は、男の子が守ってあげるのよ。もし好きな人ができたら、その人を一生かけて守りなさい。』
好き、という感情はイマイチわからない。
でも、こいつの事を守らなきゃと思う。
もしかしたらこの感情が、恋なのかもしれないと思う。
(好き…なのかな)
(一瞬、川村さんが頭を過った)
