君に遺された恋
くそっ…なんてタイミングが悪いんだ。
明らかに動揺して目を丸くした使用人アルが見える。

使用人が直接父に話をすることは無くても、
この場の誤解だけは解いておこう。

そう思って口をついて出た言葉は

「アル。すまない、ちょっと怪我をしてしまって、絆創膏をもらえないかな?」

なんて、何の言い訳にもならない言葉だった。



ミラはまだ呆然と僕の上にまたがっている。



「はい。今すぐにお持ちします。」

アルは動揺からか、少し震えた声で返事をして出て行った。



さて…この僕の上に乗ったまま放心状態のお嬢様はどうすべきか…

「ミラ?」

「あっ…ごめんなさい。荒っぽいことして…」


ミラが僕の上からのけようとする。
あれ?何だろう。離れて欲しくない。

僕は僕じゃ無くなったみたいに力いっぱいミラの腕を引っ張った。


「きゃっ!」


彼女が僕に覆い被さり、僕の理性は簡単にコントロールを失った。
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