強引同期と偽装結婚することになりました
「普段着でいいから」

お父さんがスーツで新幹線は大変だろうし、堅苦しいからやめてほしいとお願いしてきたのでいろいろ考えてくれたのかもしれない。


ネイビーのジャケットに白シャツ、そして、ベージュのパンツにネクタイまでちゃんと締めてる。

普段、スーツは見慣れているけどこんな風な私服は初めて見た。一度だけ見た私服はバーベキューの時でかなり、ラフだったし。

でも、こんな格好をして一緒に歩いているとやっぱり視線も凄かった。道行く女の子たちの目は釘付け。こんなことならもっと私もオシャレしてこれば良かったな。


「いらっしゃい、ほらそんな堅苦しくならんでいいから、どうぞ入ってください」

手土産を渡し、お辞儀も靴を並べる所作も綺麗。なんだか私がガサツなのが目立つ。久しぶりの実家に帰ってきたのに落ち着かない。


私の家族は両親に4つ違いの大学生の弟の隆太、そして私の4人家族。


お母さんに促され、リビングに行くとお父さんも隆太もいて、久しぶりに我が家に帰ってきたんだと実感した。


「すみません、先にお話よろしいでしょうか？」


お母さんが料理を温めようとキッチンに立つのを優木くんが止めた。お父さんがお母さんにこっちに来なさいと合図を送る。

弟の隆太が気を利かせて立ち去ろうとすると君にも聞いてほしいと声を掛けた。
< 27 / 199 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop