強引同期と偽装結婚することになりました
「そう、だったんだ。それなら、そう言ってくれたら良かったのに」

「・・・言いたくなかったんだ。それで結婚しないかって言ったみたいな気がして」

強引な優木くんも知らなかったけれどこんな風に弱音を吐く優木くんも知らない。私、優木くんのこと本当に何も知らないんだ。

「なんで?そう言ってくれたら私、ちゃんと協力したよ」

「ごめん。ヘタレなんだよ、俺は。自分の弱いところとか見せたくなくて強引に全部推し進めたかった。それとさ、隙を与えたくなかったんだよ、葵に。早く籍を入れて結婚式も挙げてしまえば、戸惑っている間に夫婦になれるなって」

「じゃあもしかして、結婚を急かされていることも、お見合い写真も・・・」

「うん。あれも本当のことが言いたくなくて、咄嗟についた嘘」


「そこまでして、おばあさんに結婚式を見せてあげたいんだね。最初は申し訳ない気持ちだったし、なんでそこまで優木くんが言ってくれるんだろうって思ってた。でも、優木くんが本当に結婚したい理由も分かったし、何も持ってない私で本当に申し訳ないけれど、こんな私で良かったらお嫁さんにしてください」


湧き上がる歓声と拍手。しまった。ここは新幹線の中。

それなのに、二人だけの空間にいるかのように話していたわけだから周りには聞こえているに決まってる。


「お二人さん、おめでとう。お幸せにな」


二人で申し訳なさそうに立ち上がると周りの人たちが笑みを浮かべて祝福の言葉をくれた。優木くんと顔を見合わせて笑う。


うん。私たちお互いに恋愛から始まった結婚じゃないけれどきっと幸せになれるはず。そう確信出来た。
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