現実世界で捕まえて


仕事を終えてイヤラシイマンションに戻る。
外から自分の部屋を見て
灯りが点いていると何となく幸せ気分。

待っているのは死神だけど。

「おかえりなさい」
死神さんはパソコンから目を離さず私に言う。

「ただいま」

「お風呂できてますよ。お食事にします?それとも死にます?」

ラストが怖いんですけど。

「まだ5ヶ月以上あるから死にません」

ムキになって返事をするけど
奴は私を無視してキーボードを素早い動きで叩きまくる。

業務報告とか色々あるらしい。
天界のサラリーマン。
私が仕事に行ってる間はあっちに行って雑務をこなしているようだ。

お願いごとをする時だけ現れるパターンでいいんじゃないかと思うけど、ずっと一緒に居るのが条件のようだから文句も言えない。

そして
食事が美味しいし

家に帰って
誰か居るって……意外といいもんだと思う。

死神だけど。

「今日はごはんいいです」
コートを脱いでつぶやくと、キラリと彼の目が光る。

「どうしました?」

「いや……別に……」

「風邪ひきました?手洗いうがいサボりました?」

「そんなんじゃ……」
そんなんじゃなくて

会社に行って朝は幸せだったけど……帰りに突き落とされただけです。



< 33 / 103 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop