現実世界で捕まえて

死神……いや、西上係長の会社でのドSっぷりは凄かった。

誰もが恐れる経理係長。

低い声で静かに脅すから怖すぎる。

あまりの有能さに本社から声をかけられたそうだ。

こんな子会社から本社にスカウトなんて
さすが人間離れしてる。


「俺は嫌い」

ある日のデートで仕事の話になり
ついでに西上係長の話になると、亮さんはボソッと声を出す。

「ドSだもんね」

美味しいコーヒーを飲んでも
目の前の亮さんは味わいもせず、ファッション雑誌をパラパラめくる。

「仕事はできるけど、それだけじゃダメ。優しさも思いやりもない人間。あの冷たい目。悪魔みたいだ」

惜しい。死神です。

「あんな奴が同じ会社にいると迷惑だ。輪が乱れる」

あまりのキツい言い方に、ちょっとだけムッとする私。
彼は……確かにやり方とか言葉は悪いけど、前に桜子ちゃんが言ってた通り『ドSだけど間違った事は言ってない』その意見に同意。

「悪い人じゃないと思う」

どうした私?ヤツをかばうなんて。

私の機嫌が悪いとみたのか、彼は慌てて笑顔を見せた。

「嫉妬させるなよ。仕事の話はやめよう。せっかく2人でいるんだから」

亮さん。

「それよりこれ見て。このジャケットどうだろう?俺に似合うと思わない?」

彼は雑誌をスッと前に差し出し、最高の笑顔を見せる。

最近

このパターンばかりだな。


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