ぼっちでも


目元がじんわりと熱くなるのが分かった。だけどその意味がまるっきり分からなかった。


泣く必要なんてないんじゃあないだろうか?


だって、私達は愛だの情だのそんな感情はない。結婚したと言う形だけしかない筈だから。


なのに彼の声には確かになんらかの感情が含まれていた。それがどんなものなのかまではわからなかったが。


ゆっくりと彼の気配が遠ざかって行くのがわかった。


押し殺していた声が漏れそうになる。だけど漏れたら全て彼に気付かれてしまう。気付かれてしまったら一体どうなるんだろ?


だけどそれだけは避けたい。なんとしても避けたい。


彼だってきっと困る。うん、そうに決まってるから。


また静かにパタンとドアが閉まり、部屋に妙な静寂が広がる。私はそれを合図に静かに本格的に泣き始めた。




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