もっと、キスして
いいなあ。素敵そうな家族。
きっとこの家に龍青が帰る前に明かりがついてたら、
龍青はきっとめんどくさそうに笑って、それでも笑顔で家族を迎えるんだろうな。
私も、そんな家族に囲まれたかった。
「凛。」
「え?」
龍青の手が、私の頬に触れた。
走馬灯のように記憶が鮮明に戻ってくる。
頬を撫でる手。
嫌らしく見つめる狂気に染まった目。
近づけられるタバコ。
殴られる音、蹴られる音。
向けられる刃物。
破かれる服。
首の絞まる感覚。
全て、音も、そのときのあの人の顔も、声も鮮明に頭を駆け巡る。
それだけでもうなにも考えられなくなる。
呼吸ができない。
助けて、助けて。
龍青。
「凛っ。」
「あ、あ…。あ、りゅ、」
「ゆっくり息吸え。」
「やだ、やっ、いき、」
「過呼吸起こしてるから、とりあえずゆっくり息吸え。」
龍青が私を強く抱きしめた。
訳が分からなくて。
でも、龍青の匂いが、私をすこしだけ正気に戻す。
必死に息を吸う。
龍青の腕を強く掴んだ。
龍青は私を抱きしめたまま背中をさすってくれる。