君の感情は世界を滅ぼす
「言うことを聞けぇぇぇぇ!!!」
俺の声は虚しく響くだけ。
激痛に耐えながら桜夜を見る。
………俺は背筋が凍るかのような感覚に襲われた。
「桜…夜……?」
「ふふ……ふふふふふっ!」
さっきまで座り込んでいた桜夜がフラリと立ち上がったかと思うと、顔を伏せたまま笑い声が聞こえる。
桜夜は情緒が不安定で錯乱すると周りが見えなくなり、誰に対しても攻撃的になる事が度々あった。
そんな桜夜を守りたいという一心で桜夜にずっと接してきた。
初めこそなかなか心を開いてはくれなかったが、今では俺の大切な彼女だ。
そろそろ1年が経つと言うのに。
こんな桜夜は見た事がない。
「ちっ…こんな所で……」
あの狐面の男も焦っている様に見える。
「ねぇ……こんな世なら消えればいいのに……ね?」
桜夜が顔を上げて狐面を見る。
その瞳は金色に輝き、まるでこの世のものではないかの様に美しのに。
__その奥にあるのは『闇』そのものでしかなかった。
「至急、応援班を要請する!北条桜夜が『ハシャ』として能力開花を確認!緊急レベル5に移行する!!」
狐面が携帯端末の様なものに向かって叫びながら大きく後退する。
そしてクナイの様なものを構える。
「桜夜を…殺す気か!」
「黙れ!もはやこうでもしなければ死ぬぞ!!」
そして勢いよく放たれるクナイ。
俺は槍を杖に反射的に立ち上がり、桜夜を庇おうと走る。
が、確実に間に合わない!!
「桜夜、避けろぉぉぉぉ!」
俺の声に反応したのか、こっちを向く桜夜。
だが避けようともせず、すでに目の前にクナイが迫っていた。