君の感情は世界を滅ぼす
俺の方を向いた桜夜は。
___微かに笑っていた。
「……そんなに消えたい?」
そう呟いたかと思うとクナイは桜夜の目の前で異形な形へと変形し、朽ち果てた。
ただ消えたのかと思ったが、違う。
確かに『朽ち果てた』。
「……わかったか小僧。これが北条桜夜の力だ。」
狐面で目までは見えないが、確かに「あの娘は人間ではない」と訴えているのがわかった。
「……だから何だよ。」
「あの力は世界を滅ぼす。だから『保護』し、『開花』させぬ様にしなければならなかった。」
「お前らが来なかったらこうはならなかった。違うのか?」
「違うな。北条桜夜の情緒の不安定さはいずれこの力を開花させた。時間の問題だ。」
「じゃあどうするんだよ…!」
『開花』させない為の『保護』だとしたら。
すでに『開花』してしまった桜夜はどうするのか。
答えなど1つしかないのは分かっていた。
「始末するしかない。」
狐面は両手で印を組み、真言を唱え始めた。
そんな答え俺にだってわかる。
「答えは分かってた。だけどさ、俺バカなんだわ。」
__スパンっ!
持ってた槍で狐面の足元を払って体勢を崩し、術らしきものの発動を止める。
「貴様…っ」
倒れる狐面の横を俺は走り抜ける。
___桜夜を目掛けて。