Secret×Secret
いつもの専務の気まぐれなら海外への出張だって慣れている。
でも同行するのは大抵手塚課長だ。
たまに私が同行することはあるけど私も課長も一緒に行くなんて今まで一度もなかった。

私がオフィスの自分の席に着いたのとほぼ同時くらいに見計らったように来た課長からのメールの指示にした通りに新幹線や宿泊先の手配をした。

・・・いやいや、宿泊?
と思ったけどメールに書かれたスケジュールを見ると日帰りはさすがにきついか、と思った。

っていうかあんな事があって、手塚部長と泊まりの出張ってものすごく気まずい・・・と気づいたのはすべての手配が終わって会社に置いてある自分の緊急出張セットを準備してるときだった。

「先輩いいですよねー。専務と出張なんて。」
鞄に荷物を詰めている私に後輩が恨めしそうに言った。

「私はいい迷惑だけどね。予定も何も考えないで急に出張なんて。」
彼氏と約束なんてしてたらどうすんの?
と考えてからものすごく自分がむなしくなった。

「え~私だったらたとえ彼氏とのデートだったとしても断然専務との出張を選びますけどね。」
そういってキャピキャピっとしてる後輩を横目に見て返事もせずに準備を続けた。

思い返せば先週騙されたあの既婚男と出会った合コンもこの後輩から誘われたんだったと思ったら
八つ当たりだろうとわかってはいたけれど楽しく話す気にもなれなかった。

「とにかく私も課長も明日出張から直帰予定で水曜日までいないからってちゃんと仕事するようにね。」

そうびしっと言ってから少し雑にカバンを掴むとエレベーターホールまで歩く。
後ろからはやる気のないはーい。という返事とひそひそとお局の悪口でも言ってるであろう声が聞こえた気がした。

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