Polaris
「ならどうして? どうしてあの日返事をくれなかったの? それから、消えちゃったの? 名前だって、どうして……」
分からないことだらけで、頭の中は既にぐちゃぐちゃだった。私は、ただただ「どうして」とイツキに訴えては涙を流すことしかできなかった。
「返事返せなくて、ごめん。消えちゃって……ごめん。それから、名前も嘘ついて知らない人のフリした。本当に、ごめん」
ごめん、ごめん、ごめん。
そう繰り返すイツキに私はこれ以上責めることもできず、握りしめた拳をイツキの胸元に押し当てた。
「私……本当に、会いたかった。だって、私、イツキのことが……」
視線はイツキの足元へ向けたままで、自分でも驚くようなことを言いかけた。言うつもりはなかったけれど、言うなら今しかないと思った。
………言いたい。そう思った。
でも、それは、イツキの次の一言により叶わなかった。
「……ううん、ダメ。そこから先は、言わないで。お願い」
私の唇へ当てられた、イツキの長くて綺麗な人差し指。
言わないでと言ったイツキは、哀しい目をしている。そして、瞳の奥はゆらゆらと揺れている。