Polaris
本当に自分でもびっくりするくらいに自意識過剰で、自信過剰。
でも、そうなってしまうくらいに、樹が私のことを大切に思ってくれていることを実感してしまっている。
それは、あのネットで出会ってから今〝現在〟まで。全部を通して、そう思うようになった。
「……樹」
小さく、小さく、呟いた愛しい名前。
それは騒がしい雑音や話し声に連れ去られて消えるかと思ったけれど、ちゃんと彼はその声を拾って振り向いてくれる。
「ん? なに? キョンキョン」
そういつもの笑顔で微笑んで、優しい声で私を呼んで、愛しい瞳で私を見た。
もう、それだけで、私はまた自意識過剰になっていってしまう。そして、もっと彼から抜け出せなくなっていく。
「えっ、と……ごめん。やっぱり何でもない。会議頑張ってくるね」
「……うん。頑張って」
二人で複雑に笑い合って、お互いに手を振り合った。
〝踏み込めない〟私と〝踏み込ませないようにした〟樹。
お互いに、お互いの心の奥は知っているはずなのに……どうしても私達は、その得体の知れない〝運命〟に逆らえない─────。