Polaris


バタ、バタバタ────


人混みの中、きょろきょろと辺りを見渡しながら走り続けた。

発車まで五分程度しかないのだから、もう既にホームにいるのではないかと考えた私は入場券を購入し、ホームへと向かった。

樹の乗るであろう新幹線がやって来ているホームには、やはりすごい人がいた。

もう中に入ってしまっていふかもしれない。この中から一人の人を探し出すなんて無理があるんじゃ……と、思いかけたその時。


「いっ………樹‼︎いつきっ……‼︎」


大きな荷物を片手に新幹線を待っている樹の姿を見つけた。私は人目なんて気にせずに大きな声で名前を呼び、樹のもとへと駆け寄った。

樹は驚いた表情をした後、私へとゆっくり近づいてくる。そして「何でこんなとこにいるの」と私へ問いかけた。


「樹に……会いに来たの」

「え……」

「樹に言いたいことが……あるから。だから、会いに来たの」


聞いてくれる? そう言った私に樹は複雑そうに笑って、一度だけ頷いてくれた。

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