Polaris

「私……私、ね」

「うん」

「……樹の事が、好き」

「うん。知ってたよ」


私の目の前に立つ樹は、とても複雑そうに笑った。嬉しのか、悲しいのか、分からない。そんな表情をしている。


「樹は……〝好きだった〟って言ったよね。でも、私は、ちゃんと今好きなの。まだ画面越しにいた時から……今も変わらない。ずっと、好きなの」

「キョンキョン……」

「大好きなの……樹のことが」


こんな事、言うつもりはなかった。だけど、一度言い出すと止まらなくなってしまって、この時の私は、もう全てをぶつける覚悟しかなかった。


「樹が好きで、好きで……だけど結ばれないのなら忘れようって、忘れたいって何度も思った。だけど、やっぱり私には……樹しかいない。樹がいいの。樹じゃなきゃ、いやなの……!」


………お願い。分かって。

そう願った私の言葉たちが届いたのか、気がつけば私は樹の腕の中にいた。大きな樹の胸と腕に、すっぽりと包まれていた。

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