Polaris

《キョンキョン、どうしたの? 何かあった?》

……そう。メールの差出人は、イツキ。

メールの返事もしていなかったし、まさかイツキからくるとは思っていなかった。それに、このメールの内容……。

短かい文だけど、私にとってはとても嬉しい言葉だった。

今、私が欲しいと思っていた……誰かにかけてほしいと思っていた。そんな言葉だった。

でも、きっと、イツキのことだから何となく言っているだけだろう。


北海道にいるイツキ。そして、京都にいる私。近くにいるわけでもなければ、顔も声も聞いた事がない、そんな彼と私だ。

彼に、私が今考えている事なんて、到底わかるはずがないんだ。

そう自分に言い聞かせた私は、嬉しい気持ちを抑えてボタンを打った。そして、作成したメールを送信する。


《何もないよ。どうして?》


いつも通りの、いつもと同じような定型の短い返事。

メールで自分の感情を隠す事くらい、簡単にできた。

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