Polaris
彼の優しい罠に引っかかりたくないと思うのに、指先は止まることなく動いた。
そして、気がつけば、メールは既に送信された後だった。
《イツキ、私、何が正しいのか分からない。しっかり与えられた仕事をして、間違っている事を間違っていると注意することよりも、いつも可愛くしていて、誰かを味方につけている事の方が正しいの? 私の性格もいけないのは分かってる。キツイし、何でも言っちゃうし……可愛気もない。だけど、もう辛い。嫌だ。気にしてないフリするの、もう嫌だ。》
自分の気持ちを、吐き出してしまった。綺麗な文になんてならないくらい、滅茶苦茶に吐き出してしまった。
……しまった、と思った。
私ってば、何言ってるんだろう。しかも、よりにもよって顔も声も知らないイツキなんかに。
もしかしたら、流石のイツキも、こんな滅茶苦茶な文には引いちゃうかもしれないな。
なんて、そう思っていると、ぎゅっと握られた手のひらの中で震えた携帯。メールの相手は、イツキからだった。